研究内容

蛍光タンパク質などの標識分子を用いた蛍光イメージングは、バイオイメージングの最もポピュラーな手法の一つです。しかし、例えば緑色蛍光タンパク質はサイズが3 nm程度など、典型的な標識分子は標的分子に対して数倍~10倍程度の大きさになってしまいます。これに加えて、蛍光スペクトルは一般に幅広いため、多重標識は6色程度が限界です。
そこで現在、ラマン散乱が注目を集めています。ラマンスペクトルは「分子の指紋」とも呼ばれ、分子構造を鋭敏に反映した複数の鋭いバンドを与えるため、細胞内の複数分子からの信号をラベルフリー(標識無し)で取得できます。しかし、ラマン散乱にも泣き所があります。通常のラマン散乱光は微弱なため測定に時間がかかり、ライブイメージングには一般に適しません。
私たちは、微弱なラマン散乱光を増幅する非線形ラマン散乱(coherent anti-Stokes Raman scattering; CARS(“カース”と呼びます))を用いて、ラベルフリー多色分子イメージングを行っています。加えて、同時に励起・検出可能な高調波発生や二光子蛍光も利用し、マルチモーダルな観察を行っています。

マルチモーダル非線形光学顕微分光イメージング法の開発

開発しているマルチモーダル非線形光学顕微鏡

分子の指紋で描出する生細胞内の分子動態

線虫(神経細胞をVenusで標識)の分子イメージング

コヒーレントラマン分光イメージング法を用いて取得した、生きた線虫の結果を示します。この結果では、非線形ラマン散乱に加えて複数の非線形光学効果も同時に検出しています。これらのイメージのうち二光子励起蛍光(黄)と第二高調波で中間強度(緑)を与えている部位とが一致することから、第二高調波で腹神経索も可視化していることがわかります。 私たちの手法は、上記のように標識分子も同時に可視化できます。最先端の生命科学研究とも相性の良い本手法を用いて、未知の生命現象・細胞内イベントの可視化・メカニズム解明に向けて、現在研究を進めています。 (九大理学部ニュースを一部改編して掲載)

第二高調波発生による生体分子構造の探索

第二高調波発生(左)及び第三高調波発生(右)によるマウス大脳の観察像

対称心を持たない分子が配列すると、第二高調波発生(SHG)が起こります。 この信号は、従来の手法では発見が困難だった細胞・生体組織内の分子構造を美しく浮き彫りにします。 私たちはSHG信号を用いることで、生細胞・生体組織に隠れた未知の分子構造の可視化に挑戦しています。

その他の研究

  • 様々な非線形光学効果を用いた非染色・細胞イメージング*
  • 新しい光源、”白色レーザー”を用いた、新しい細胞・生体組織イメージング法の開発

Collaborations

国内(過去実績含む)

海外

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慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科

非線形バイオフォトニクス研究室

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